Digital Archives Research Center (DARC)

古典籍・文化財デジタルアーカイブ研究センター

研究活動

研究目的

【研究活動の目的】

 本学の建学の精神に基づいて収集した古典籍・文化財のデジタルアーカイブ資産を有効活用し、最先端技術を用いて、学術資料の多面的公開のためのデジタルアーカイブを形成する。また、文理連携型の学際研究と国際敦煌プロジェクトとの国際連携の実績を基に最新の研究成果や科学分析等を通じて時代考証などの考察を加え、文化財・学術資料の保存・修復・継承を支援し、次世代デジタルミュージアムの構築を目指す。

【事業の目的】

 本学は、膨大な古典籍や中央アジア出土資料など希少価値を有する文化財を保管している。それは、仏教(浄土真宗)を建学の精神とし、382年の伝統を有する本学において実現できたものであり、その文化財は、そのまま学術資料でもある。「文化財保護法」の挙げる文化財の6分類のうち、「有形文化財」に含まれる写本・古典籍・絵画・彫刻・建築など、「無形文化財」に含まれる舞踊・音楽・声明など、及び「民俗文化財」に含まれる儀式・儀礼などを中心としたコンテンツ研究を行い、それらをデジタル保存し、より汎用性の高い手法で広く研究者及び社会一般に公開することを目指す。

 本事業は、学術研究を目的とした文化財デジタルアーカイブの資産を有効活用するため、古典籍をはじめとする文化財や学術資料そのものを中心に据え、デジタルアーカイブを活用した展示・展観・閲覧による多面的公開手法の研究を行うことを目的とする。

一方、SDGsとの関連で言えば、「9 産業と技術革新の基盤をつくろう」が最も関連する項目となる。本センターの使命は、本学のもつ唯一無二の文化資産を有効活用し、その研究成果を社会に公開するための最新の革新的基盤を形成することである。

 それは、仏教総合博物館たる龍谷ミュージアムでの新たな展観手法の提言、地域にあっては、寺院等で継承されてきた法要・法会等の民俗文化財のアーカイブ、寺院空間を形作る仏像や荘厳具の複製、さらには寺社建築の設計技術における持続可能性を探る試みになるであろう。「仏教SDGs」を掲げる本学の研究として基幹的研究になることが期待される。

 以上、「大学が政策的に掲げるテーマに合致した研究」として、「多様な分野と仏教をつなぐ研究」および「SDGs」が掲げる 17 のゴール実現に向けた研究」 に該当するものと考える。

研究目標・方法

 本事業を遂行するため、「古典籍・文化財デジタルアーカイブ研究センター(以下DARC)」を置く。
 20世紀初頭に日本で唯一のアジア探検を敢行した大谷探検隊の収集した資料は、現在、中国・韓国・日本に分蔵されている。本学所蔵資料については、すでに文献資料のほとんどが国際敦煌プロジェクト(International Dunhuang Project: 以下IDP)サイトを通じて公開されているが、美術考古資料や植物標本などについては、未着手となっているものが多い。それらの資料をデジタル保管し、本学世界仏教文化研究センター、大宮図書館、龍谷ミュージアム等と連携して、当該資料の研究を推進し、社会に公開するに相応しい内容やより有効な展観手法の可能性等について提案する。

 古写本については、IDPサイトに公開している仏教典籍について『大正新脩大蔵経』収載典籍との同定や他の所蔵機関との接合(群際接続)情報、新出資料の呈示、さらに当該資料の研究履歴等の情報を追加し、データベースを補完する。これまでデジタル公開されていない植物標本については、研究期間中に公開を目指す。また、大谷光瑞と同時代に生きた博物学者・南方熊楠の日記(未刊行分)のデジタルアーカイブを行い、菌類図譜や交友関係、読書や民俗学などの論文執筆の記録等の公開により、博物学と民俗学の二分野にまたがる世界観を呈示する。

 一方、従来の博物館展示は、実物展示および複製展示が中心となっており、これらを補うため情報技術を用いた呈示が行われているが、壁画や建築物などの大型展示物は、空間や手法の制約により実展示が難しく、個別断片的な展示になりがちである。CGやVR(仮想現実感)、AR(拡張現実感)技術を用いた展示も行われているが、特定の文化財に限定した関連展示が多く、複数の公的ミュージアムが所有するデジタルアーカイブへ適用することは困難である。本事業では、寺社仏閣や文化財そのものを中心に据え、テーマ展示を主とする博物館展示との連携を図る展観手法を確立する。グローバル展開が進む学術研究データベースのアセットを活用し、臨場感を加工し強化するという「超臨場感」技術を用いた次世代ミュージアム展観を実現するため、複数の博物館におけるテーマ展示に応用できる汎用的な基盤技術を構築する。

 また、無形・有形文化財を単にデータ化し複製するだけでなく、ある感覚の情報から他の感覚の情報を補完して認知・解釈する「クロスモダリティ(感覚間相互作用)」を持つデジタルアーカイブを構築する。具体的には、仏教塑像・壁画などの文化財を対象としたマクロな3D輪郭形状とミクロな3D表面粗さの計測、彩色材料の材質に関する科学分析、伝統芸能の所作などを対象とした人体動作の計測を行う。仏教塑像等の復元彫刻において、肌合いなどの質感をも再現する。さらに、彩色材料の材質などについて科学分析を通じた時代考証と技術史的な考察を加え、所有者へ還元することにより、文化財の修復や継承を支援する。

【研究組織】

 上に挙げた目標を円滑に遂行するため、DARCでは、2つの研究ユニットを設け、相互交流しながら研究活動を推進する。

 ユニットA【デジタルアーカイブと多面的展観手法研究】
 ユニットB【コンテンツとデジタルヒューマニティーズ研究】

各ユニットの組織・目標・方法

 ユニットAは、先端理工学部の8名の兼任研究員から構成される。実展示連携3D情報呈示、展観ガイドと学術資料公開情報サービスを研究主題とし、新たな展観手法を支えるVR、ARなどのメディア統合に基づく情報工学・メディア工学の新たな展開を軸として研究を進めていく。また、保存科学・材料科学・計測工学・人間工学・機械工学の応用範囲を文化財・学術資料に集約し研究を進める。
 ユニットBは、文学部・国際学部・農学部に所属する6名の兼任研究員から構成される。文献・美術考古資料、および植物標本等を研究対象とし、仏教学・東洋史学・美術史学・文化人類学・博物館学・農学・民俗学等の学際連携により古典籍・文化財のコンテンツ研究を行う。
 また、龍谷ミュージアム所属研究員2名は、ユニットの枠を越えて、全体計画と有機的にかかわり、各種コンテンツや多面的展示手法の具体的提示に協力する。