Digital Archives Research Center (DARC)

古典籍・文化財デジタルアーカイブ研究センター

研究成果

これまでの研究成果

 DARCでは、これまでに古典籍をはじめとした文化財・学術資料を対象に、様々なデジタルアーカイブの構築・公開を継続的に行ってきた。本学の図書館に蔵されている国内外の希少価値を有する古典籍、大谷探検隊が中央アジアを中心として収集した文物などは世界に誇るべき文化遺産であり、これらを整理分類・保存し長く後世に伝承することは本学に課せられた大きな課題である。
特に、20世紀初頭、浄土真宗本願寺派22世宗主もつとめた大谷光瑞によって派遣された大谷探検隊収集の資料は、「西域文化研究会」によって複数領域の研究者が集結した異分野横断型研究の必要性を喚起し、国際的共同研究によって、種々の研究成果をもたらしてきた。そして文献資料は、DARCによってデジタルアーカイブ化され、IDPを通じて世界に発信されている(2021年10月18日現在:19,273点)。
 この他、シルクロード壁画復元(ベゼクリク石窟寺院壁画誓願図復元)や、世界的映画監督の黒澤明氏が残した創作ノート・映画台本・直筆資料や写真などをデジタルアーカイブした「黒澤デジタルアーカイブ」、本学図書館が所蔵する仏教学・真宗学等の貴重図書「龍谷大学図書館貴重資料画像データベース」、「仏教東漸〜大谷探検隊収集資料」などのデータベース公開事業が挙げられる。
2019年度には、本学創立380周年事業に協力し、龍谷ミュージアムで開催された企画展「龍谷の至宝〜時空を超えたメッセージ」(2019年7月13日〜9月11日)の出陳品の選定や、同時に刊行された『時空を超えたメッセージ―龍谷の至宝』(龍谷大学創立380周年記念書籍編集委員会編, 法藏館, 2019)に編集委員や執筆者として参画した。
2019年度には、コロナ禍で中止となった研究総会の内容を『龍谷大学古典籍・文化財デジタルアーカイブ研究センター2019年度研究成果報告書』 (2020年3月)を刊行した。また、本学重点強化型推進事業に採択された2020年度までの研究成果報告として、「文化財・学術資料のデジタルアーカイブと多面的公開手法の研究 : その研究概要と展望」(『人間・科学・宗教総合研究センター研究紀要』1, pp.123-134)を寄稿した。
さらに、2021年12月3・4日には、3年の研究期間最終年度の研究成果公開として、龍谷ミュージアムにおいて、「文化財デジタルアーカイブへの挑戦~大谷探検隊と西本願寺の仏教文化の復元をめざして」と題する研究展示会を開催した。

以下、5つの観点から整理する。

①国際的連携

 2004年以降、継続してきたIDPとの連携が挙げられる。IDPでは、先に挙げた7機関のみならず、世界各国の所蔵機関とも相互に連携している。これまで、龍谷大学図書館所蔵の中央アジア出土資料のデジタルアーカイブとWeb公開を行い、画像を中心とした基礎的資料を閲覧できる環境を整備してきた。海外の関係諸機関と連携し、研究者交流を実現するとともに、国際シンポジウムの開催や研究成果報告書を刊行してきた。
 IDPとの連携の前年に当たる2003年には、大谷探検隊100周年記念学術企画「シルクロードの文物と現代科学」 (龍谷大学瀬田学舎2003/9/12) を開催し、IDP Conservation Conference 2007(大英図書館)においては、研究代表者が参加して発表(2007/5/22)した。近年では、IDPのSusan Whitfield氏を招聘して開催した「中央アジア出土資料のデジタルアーカイブ〜その現状と課題」(龍谷大学2016.11.18)、大谷探検隊収集品を保管する旅順博物館との研究協定に基づく「絲綢之路與新疆出土文獻〜旅順博物館百年紀年國際學術研討會」(中国大連市旅順口区2017/11/6)、世界仏教文化研究センターとの共催で行った「西域桃源〜大谷探検隊から見たクチャの仏教文化」(龍谷大学2019/2/23)といった国際シンポジウムは、研究代表者が直接かかわったものである。さらに、これまでの国際的共同研究の成果として、『大谷隊ドイツ隊収集漢字仏典断片目録』(三谷真澄編2018)を刊行した。また、2018年11月2日に、研究代表者とユニットBの岩尾、ユニットAの芝が大英図書館を訪問し、IDP Partners Workshopに参加し、“Current status of IDP-Japan and Ryukoku University Digital Archives Research Center (DARC)”と題する報告を行い、今後の方向性について協議した。

②社会連携

 浄土真宗本願寺派本山・西本願寺との連携はもとより、京都の伝統工芸に関する職能を有する企業や個人と共同研究を実施するなど、文化財修復関連の異業種間連携を率先して行ってきた。2008年、西本願寺の「本願寺デジタルアーカイブ事業」のうち、虎之間障壁画(竹林群虎図)の修復に際して、蛍光X線による顔料分析を行い、川面美術研究所と連携して復元させたことを特筆したい。
 また、龍谷ミュージアムで上映するシアター映像の制作や体験プログラムの実施、大津駅観光案内所VR体験コーナーで使用する映像制作など、博物館や自治体との連携も行っている。
2021年8月2日〜9日に、上記本願寺虎之間への特別拝観、科学分析に基づいた障壁画の保存修復などに関する展示、障壁画の保存修復に用いられた岩絵の具の作製方法に関する展示、岩絵の具の作製方法を体験できるワークショップを、龍谷ミュージアムを会場として実施し、一般のほか、地域の子どもたちやその家族らの来場があった。
 また、中央仏教学院の馮翊会館外壁への「ベゼクリク千佛洞」復元壁画掲示に協力した。

③若手研究者育成

 DARCでは、運営委員会に、教授だけでなく准教授や講師に参画してもらい、最新の研究成果を活かせるよう努めてきた。また、助教や大学院生に研究発表や研究成果公開の機会を提供してきた。
 また、2021年12月の研究成果展示会において、院生だけでなく、学部生や博物館学芸員課程の受講生が協力した。
 2019-2020年度にRAとして雇用した慶昭蓉氏(客員研究員)は、コレージュ・ド・フランス任期付准教授を経て、2021年10月1日、京都大学白眉センター准教授に就任した。

④外部資金獲得

 DARCはこれまで、2002年度に文部科学省「私立大学学術研究高度化推進事業学術フロンティア推進事業」、2009年度および2012年度に文部科学省「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択されている。
 本研究課題に参画している兼任研究員は、科学研究費補助金、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業をはじめとする外部資金獲得の実績が豊富であり、本研究課題と連動しながら、当該学問分野の研究を深めてきた実績がある。

⑤大学院教育への波及効果

 過年度の研究成果報告会では、高度な専門性を有する分野の研究成果を挙げた修士課程、博士後期課程の院生に対して最新の研究成果を報告する機会を提供してきた。また、2018年度にKim Heakyoung(金恵卿)氏の博士学位申請論文「韓紙と活字の3D 形状計測〜韓国古刊本を中心に」が提出され、審査の結果、博士(工学)が授与された。